日本は安い国になった

 加谷圭一

日本の物価は今や欧米や一部のアジア諸国と比べて低水準になった。訪日外国人(インバウンド)がどっと増えた一因は日本の安さにもある。日本は世界でも指折りの経済大国であることは当たり前の話でしたが、その常識が崩れている。

なぜこうなったのか。バブル崩壊以降、日本経済はゼロ成長の状態が続いており、賃金水準は上昇していない。この間、先進諸国は国内総生産(GDP)を1.5倍から2倍に拡大させた。日本は相対的に貧しくなってしまった。今はもう豊かな先進国ではない。

日本経済が成長を止めた理由の一つがビジネスのIT化にうまく対応できなかったことだ。1980年代以降、パソコンが普及した。先進国の多くの企業は、普及と同時並行で、ビジネスのIT化を積極的に進めた。ところが日本は従来型の産業モデルにしがみついて改革を怠った。その結果、業務の効率化が進まず、生産性も伸びていない。

国際競争力は低下したままだ。エレクトロニクス製品など日本製品が世界を席巻したことがあったが、それはもう過去の話だ。全世界の輸出における日本のシェアは低く、今や日本は輸出大国ではなくなった。

アルコール、除菌、マスクの仲間の経営塾より