リターンズ

ジェイムズ・クリフォード

ヨーロッパ中心主義もアメリカの覇権も、まだ消えてはいない。
だが脱植民地化と多方向に向かうグローバル化の流れの中で、確実に求心力を失いつつある。

世界が一つの方向に進化していくという歴史モデルが保てなくなりつつある。
各地の先住民たちが長く維持してきた循環する世界が螺旋状に連なるモデル。
そのモデルは、複数の異なる歴史が矛盾を抱えたまま、重なり併存する中で、新たな世界観になる可能性を持っている。

フランスの博物館で100年以上守られてきた祖先の仮面を見たアラスカの子孫たちはその力強い造形に激しく心を動かされた。
ロシアとアメリカの支配に耐え、感染症や天災を生き延びた彼らは、自分たちの文化を見失いつつあった。

交渉により展覧会が実現、新たな仮面作成と民族アイデンティティ再建に繋がる。これは和解の物語になっていく。
暴力を越えて共生するための希望の探究である。

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より