『一日一話、寝る前に「読むクスリ」』

二見道夫

ギリシャ神話に出てくる刑罰の神ネメシスが、次のような人間は許せない、人間として最も卑しむべきであり、厳しい罰を与えなければならない、として“七つの大罪”を挙げている。

一、自慢ばかりして高慢なこと(威張った態度になるから)
二、ケチなこと(ボランティア精神に欠けているから)
三、すぐ怒る、すぐカッとなること(精神作用が単純すぎるから)
四、他人を妬むこと(自分のいい加減さを棚に上げ、成功者の足を引っ張るから)
五、大食であること(自己管理のできない人間は、いずれ傍迷惑になるから)
六、贅沢をすること(自分の稼ぎに不釣り合いなほど見栄を張るから)
七、怠け者であること(楽をして儲かる話はないかとばかり考えているから)

七つの大罪を見渡してみると、これらは私たち人間の性格や考え方、あるいは常識などと大きく関わっている。
ネメシスならずとも、罰を与えるにふさわしい七つの大罪かと思う。

自慢・高慢について触れてみる。Sさんはよく私をなじみのレストランに案内してくれる。しかしそのレストランでの従業員に対するSさんの態度が、私など赤面するくらい横柄なのである。要するに自慢高慢型なのである。従業員たちは、はいはいと言ってサービス提供に努めているので本人は気づいていないが、ある日のこと、まったく別の人とそのレストランに出かけることになった。この人もこの店の常連だ。従業員とも懇意である。Sさんと従業員との関係とはまるで雰囲気が異なって本当に親しい、それでいてお互いに敬意を抱いていた。
私のことを、これこれの人だからよろしく……とこの知人が紹介したら、「お顔だけは存じ上げております」というチーフ(その日に知った)の返事である。
その夜遅く、店の外でチーフと一杯やったときのこと。「ここだけのお話ですが、店の者が嫌がるんですよ。頭ごなしでしょう、あの方は……」とSさんのことを言うのである。従業員たちは、Sさんの高慢な態度を日頃から快く思っていなかった。
では彼の高慢さはどこから来たかというと、「会社が有名大企業だから」なのである。彼が「私はどこどこに勤めています」と言うと、必ず「ああ、あの有名な……」との反応が返ってくる。それで会社と自分の格とを混同しているのである。もちろんその会社に勤めている人がみんなSさんのようなわけではない。彼個人の威張りたがる性格が主因なのである。

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より