がんばらない、がんばらない
ひろさちや
インド人は輪廻転生を信じている。人間は生まれ変わり死に変わりして生存し続ける…といった輪廻の思想を古代からインド人は持ちつづけている。この輪廻の考え方によると、人間はこの世にあって一つの役割を果たしていることになる。そして、与えられる役割は人それぞれにちがう。男の役割、女の役割、金持ち、貧乏人、貴族、庶民…と、役割は無限にある。その役割を振り当てられて、わたしたちはこの世に生存している。
なかには損な役割もある。そして、いやな役割がある以上、貧乏くじを引かされる人もいるわけだ。それはちょうど、舞台の上の芝居のようなものだ。芝居にはさまざまな役割があり、誰かがその役割を引き受けなければならない。王子さま、お姫さまの役割だけでなく、悪代官の役割だってあり、それを演ずる人が必要だ。もちろん、芝居の筋書きを変えて、損な役割・いやな役割をなくす努力も大事である。
けれども、現実の芝居にその役がある以上は、誰かがそれを引き受けねばならない。そうでないと芝居にならない。そこでインド人は、わたしはこの世でこんな役割を与えられたから、それをしっかりと果たしていこうと考える。他人の役割をうらやましく思うのはやめて、自分の役割をしっかりと果たそうとするのが、インド人の考え方だ。
そうすると、輪廻の次の舞台でもっといい役割がもらえると信じているわけだ。わたしは、インド人の考え方を全面的に肯定するわけではない。が、
他人の役割を羨望することなく、自分の役割に専心するインド人の態度に、拍手をおくりたい。
アルコール、除菌、マスクの仲間の経営塾より