『望みはかなうきっとよくなる』
筑波大学名誉教授、村上和雄
利己的遺伝子という言葉の影響かどうかわかりませんが、個性偏重の傾向が強いように思えます。個性を大切にすることは、多様性を確保するという意味でも大事なことですが、それが行き過ぎたのかどうか、どうも「俺が」「俺が」という弊害が見れます。それが利己的な人間の増加に拍車をかけている。
近代社会は、「個」というものを一番大切なものとして祭り上げてしまいました。しかし、本来、他者や周囲との関係性がない個というものはありえません。つまり、個は個だけでは存在できないのです。自然界を注意深く観察すればわかりますが、ものごとはペアで存在しています。男と女、陽と陰、+と-、さらにDNAの二重らせん構造もペアという見かたができます。
そうやって関係を持ちつつ、お互いを支え合い、助け合っています。個性は大切かもしれませんが、それを強調しすぎると、かえっておかしな世の中になってしまいます。個性と並んで重要視されているのが、独創性です。科学でも独創性のある研究や考察が重視されますが、本来、純粋な意味での独創性というものはないのかもしれません。
すべては自然の模倣にすぎないといえます。科学において、法則を発見することは高く評価されますが、それはもともと自然界にあったものです。科学はその後追いをして法則を見つけるだけです。もし、独創性ということを問題にするなら、カビのほうが人間よりもずっと独創的です。彼らは状況に応じて自分をどんどん変えていくことができるので、これ以上、独創的な存在はありません。病原菌も薬剤に対する耐性を身につけて、それが効かないように変化しながら生き延びていきます。
アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より