『エスプリ思考』

川島蓉子

「エルメスには、社史というものが存在しないのです」 新しい商品を出す時は、必ずデュマ氏が確認してから世に送り出していた。
「いいものしか出してはいけない。悪いものを出して、もし売れてしまったらどうするのか。
取り返しがつかないことになる」 単なる未来志向ではなく、過去と未来の結節点としての現在を大切にし、
過去と未来がミックスされている時として、今をとらえる

「買えるわけではないので、見せてもらうだけでは申し訳ない」と、おばあさんが言うと、  
「スカーフは、見られること自体を喜んでいるのですから、心配なさらないでください」と、その店員は答えた。
スカーフを、さんざん見せてもらって大喜びし、おばあさんは帰っていった。
後日、社長であるデュマ氏に、一通の手紙が届いた。  
本店で手厚いもてなしを受けた顛末と、お礼の言葉が綴られていた。
デュマ氏は早速、本店の販売員に招集をかけ、手紙を読み上げ、「こんな素晴らしい仕事をしてくれる皆さんに感謝したい」と語りかけた。  

家長が家族に話すように、顔を合わせて直に伝えたのである
分業を良しと、しないのがエルメスだ。
一人の職人が、すべてを手がけることで、責任と愛情を持ってモノ作りに力を注げる。
一種類だけでなく、さまざまなタイプに及ぶことで、技術の幅や奥行きを広げられる。
常に新鮮な気持ちで取り組める 流行で終わることを拒絶するところに、エルメスの価値は存在している  
だから、ライセンス・ビジネスを手掛けない。

「エルメスのマーケティングとは、作り手の意志と使い手の意志を交流させることでしょうか」
格段に品質が良ければ、人はどこか壊れたからといって、使い捨てることなく、長きにわたって修理を重ね、使い続けるに違いない
大きくなってもいいが、太ってはいけない
「『足は地に、頭は宇宙に』とは、デュマさんが語った大好きな言葉のひとつです。
地に足をつけて自分の立ち位置を、しっかり見究め、宇宙に向かって飛翔するような創造性を持てと言い続けていました」
組織のために仕事をするのではなく、目的のために仕事をする

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より