『わが人生に刻む30の言葉』

牛尾治郎

三十年ほど前にソニーの厚木工場を見学したことがあります。創始者の井深大さんがまだ第一線で活躍されていたころです。何よりも私の目をとらえたのは、工場に掲げられたスローガンでした。工場にスローガンを掲げるのは、どこでもやっていることです。

私の目を奪ったのはその中身です。中身の素晴らしさに私は感動したのです。「鍬(くわ)を持って耕しながら夢を見る人になろう」これがスローガンの言葉でした。人間は鍬を持って耕すと、ともすれば耕すことだけにとらわれがちです。わが身を振り返っても大いに思い当たるのですが、経営者はことにそうではないでしょうか。耕して、そこから得る収穫に一所懸命になってしまう。

ところが、耕すことに熱中していると、やがていくら努力しても収穫が増えない状態に遭遇します。増えないどころか、じり貧に陥ってきます。夢がなければ発展しません。耕す努力だけでなく、夢を実現する努力がないと、物事は必ず行き詰まるのです。

ところが、夢を見るとなると、もっぱら夢を見ることにかまけてしまいがちになるのも人間です。夢から夢を追いかける具合になって、単なる夢想に陥ってしまう傾向があります。

耕しながら、夢を見ることが大事なのです。耕す努力を続けていれば、夢はどうしても地に足がついたものになります。それだけ実現の可能性も高まるというものです。

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より