『人生は曇りときどき晴れがちょうどいい』
精神科医、斎藤茂太
人の「第一印象」は、その人物の姿形よりも、最初に発するひと言ふた言に左右される。いかつい体で無骨な顔の相手が丁寧に挨拶をし、腰を低くして接してくれれば、外見にかかわらず好印象を持たれる。ところが、「ああ、この人は損をしているな」と思う人がいる。それは初対面のとき、自分の立場と相手の立場、同じく肩書などですぐに対応の態度を決めてしまう人だ。
特に自分のほうが立場が上だと判断したようなときには、不遜な口のきき方をし、人を見下したような態度を、あからさまではないにしろ、相手にわかるように示す。そんな人だ。そういう人に限って、徐々にそれがエスカレートして、別れ際には、相手に上下関係を強く印象づけようとする。
私のような年齢になると、その底意が見えて、「損な人」だなと思うと同時に、ある種の哀れみさえ感じる。人間は少しでも人より高みに立ちたい。でも本来、その高低、上下は長年にわたる関係で構築され、第三者の目から見ても、納得されるものでなくてはならない。はじめから立場や肩書きで相手を侮ると、意外なことから恥をかくことになる。初対面の相手がどういう人であれ、言葉づかいや態度が変わらないというのが望ましいが、これはなかなか修養のいることだ。
アルコール、除菌、マスクの仲間の経営塾より