『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』

ピョートル・フェリークス・グジバチ

世界より速く動いて成果を上げなければいけない

グーグルの強い使命感。常に今の10倍の成果を上げよう、そのためにはどうしたらいいかと考え、それを実現している。1997年にグーグルの創立者であるラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの二人がGoogle.comをドメインとして登録したときには、そのブランド価値は0円だったが、2016年にはおよそ14兆5000億円を超える価値になっている。また、年間の生産性は、従業員一人あたり1259万円。同じ計算で日本の大手企業と比べるとパナソニックは300万円、日立製作所は311万円なので、その4倍近い生産性がある。この差は、仕事のしかたや、組織のあり方などから生まれる。

1.日本で仕事をしていて気づいたのは、「持ち帰って検討します」と言って先延ばしにするケースが多い。僕は大抵の作業は、その場で終わらせるようにしている。小さくても何かひとつのことが終わると、もうその仕事のことは頭から消え、次の仕事に気持ちを切り替えることができる。仕事を「持ち帰る」と、いつまでたっても終わらない。どうしてもその場で解決できないときでも、「今その場でわかること」「今返事できること」を見つけて少しでも進めておくべきだ。

2.日本の企業で研修をしていて思うのは、「検討しすぎる」ということ。筋道を立てて考えることはたしかに大事だ。でも、その場の「直感」にも、実は、大きな意味がある。「直感」はただの思いつきではない。今までのあなたの経験の積み重ねからもたらされるものだ。あらゆることを「検討」してから何かを始めるのではなく、まず「直感」に従ってみる。論理的に考えた結論が「直感」に反するときは、「直感」を信じてみる。そのほうが、いい結果が得られることも多い。新しいアイデアは、様々な材料をテーブルに並べながら、「直感」に従ったときのほうが多く出る。

3.日本の企業を見て思うのは、コミュニケーションツールがうまく使えていないということ。直接会ったほうが速いのに、メールで何度もやりとりをしていたり、「現物」がないまま言葉だけで議論するから、イメージが食い違ったりして、頻繁にやり直しが発生していたり…。たとえば、文章をプロジェクターに映して、みんなの前で文章をつくってしまえば合意もとりやすい、言葉よりも「プロトタイプ」(試作品)を見ながら意見交換したほうが、イメージが湧きやすく、より建設的に物事を進められる。

そして、最後に、みなさんにお伝えしたいのは、「自分の仕事を壊す」ということです。自分の仕事を自分でしなくて済むようにすることこそ、究極的な「効率化」であり、今後生き残るために必要なこと。IT(情報技術)やAI(人工知能)に仕事が奪われると恐れる人がいる。コンピューターとインターネットによる情報革命(第三次)に続く第四次産業革命で、人間がすべき仕事の内容はどんどん変わっていく。こんな時代には、「自分の仕事がなくなる」ことを恐れるのではなく、むしろ「どうしたら自分の仕事をITに置き換えられるか」「どうすればもっと自動化・省力化できるか」を考える。

自動車の「自動運転」が典型的だが、人がやっていた仕事を機械で置き換えた人が勝つ時代になった。動画ストリーミングサービスのネットフリックスも、かつては宅配レンタルDVD業者にすぎなかった。DVDという物理的なモノをなくし、人手を介した宅配サービスをネットに置き換えたことで、一気に自動化が進んだ。他にもメディアを持たない世界最大のメディアカンパニーのフェイスブックや、ベッドを1台も持たない世界最大のホテル事業者・エアビーアンドビーなど、業界を破壊するような企業が続々と登場している。空いた時間に自分の車を使ってタクシー業務ができるライドシェアのウーバーも、そのうち自動運転が主流になり、ドライバー自体不要になるかもしれない。

同じことは、一人ひとりの仕事でも実現でる。積極的に自分の仕事をITに置き換えていけば、そこであなたは仕事を奪われる側ではなく、その業界の次の形を創造する側に立てる。毎年同じことをしているだけだと、その仕事はきっと機械に取って代わられてしまう。

時代の変化にただ流されてしまうのではなく、その変化より速いスピードで動けたら、時代に取り残される心配はなくなる。時代の変化より速く動けたら、時代を先読みして、自分が変化を起こしていけるようになる。自分が変化に踊らされるのではなく、自分が変化をコントロールするようなイメージだ。

〇より早く動くための方法

■《メールせず、全員で同時に作業すれば10分の1の時間で終わる》グーグルのオフィスには、ミーティング用の部屋に必ず大きなスクリーンが設置してある。議事録をとるのも、資料を作成するのも、誰かがひとりでパソコンに向かって書き込むのではなく、クラウド上のグーグルドキュメントに全員が同時に書き込めば、その場でほとんどできる。

■《日程調整にメールを使わない》グーグルカレンダーなどのクラウドサービスを利用すれば、できる範囲はグンと広がる。現代ほどビジネスに速さが要求されるときはない。「リーン・スタートアップ」のポイントは、スタート時はコストをかけずに、すばやくたちあげること。そして、必要最小限の機能だけでリリースして、走りながら考えることだ。失敗やバグがあっても、それは走りながら修正していけばよい、という考え方だ。

アルコール、除菌、マスクの仲間の経営塾より