ユートピアの声

 スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ

平等な世界を目指したはずの社会主義体制が瓦解した後、跋扈したのは成金だ。そして、社会に蔓延したのは拝金主義だった。年金制度は形骸化し、急速に格差が広がっていく。そして新たな社会像が模索されることも無いまま、経済至上主義の軍事強国を目指す使い古しの道を選んでしまった。

それはロシアに限ったことではない。今や、人間の健康や環境をないがしろにしてでも、金儲けができればいいという風潮が世界中にはびこっている。でも、私は金儲けの為なら何を売ってもいいとは思わない。武器や原発を輸出したり、射幸心を煽るカジノを作って金儲けをするのは倫理的に間違っている。

道徳を重んじるのであれば、今さえよければ未来はどうなってもいいという利己的な考えは捨てねばならない。新しい哲学が必要だ。共産主義イデオロギーに後戻りするのでもなく、金儲けに走るのでもなく、宗教に救いを求めるのでもない新しい哲学。哲学とはいってもさして難しいことを求めているのではない。人間の命の意味、私たちが地上に存在することの意味について知りたい。私たちは未来に対して責任がある。

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より