『お坊さんに学ぶ長生きの練習』

藤原東演

以前、知人のお坊さんがテレビに出て、「(お坊さんの世界では)70歳、80歳はまだまだ若造。90歳でやっと一人前」という話をしていました。これを聞いて、「お坊さんは随分と長生きなんだな」という印象を持ちましたが、どうやらお坊さんは本当に長く生きるようです。
1980~82年の国勢調査をベースにした報告では、平均寿命が長い職業の第一位が僧侶(宗教家)。ちなみに、お隣韓国でも、1963~2010年のデータで、宗教家の平均寿命が一番長かったそうです。お寺の中にいると交通事故に遭わない分平均寿命が伸びるとか、いろんな事情はありそうですが、確かに印象的にもお坊さんは長生き。それに、亡くなる直前まで仕事を続ける方が多いのです。

これからは人生が100年の時代に突入するらしいので、その間、健康でいることは必須。しかし残念ながら、日本人は「寝たきり年数」が世界一の民族。男性は9.2年、女性は12.7年の寝たきり年数という話もあるそうですから、気をつけたいものです。

老人は「寿命を引き延ばすにはどうすればいいか?」と良寛さんに聞いたのでした。ここぞとばかりに良寛さんはきっぱり言い切ります。
「死なない工夫じゃ」

「真面目なる生涯を送ること」(内村鑑三)、「死の恐怖の克服」(岸本英夫)の二つが、永遠の命を感じるための秘訣。しかし、そのためには自我を滅する必要があり、それこそが良寛の語る「死なない工夫」なのです
良寛(74歳)さんが知人に宛てた、当時起きた地震被害の見舞いの手紙があります。「災難に逢う時節には、災難に逢うがよく候。死ぬ時節には死ぬがよく候。是はこれ、災難をのがるる妙法にて候。」
災難が起きたときは、事実としてありのままに受け止めればよい。死ぬときも、事実としてありのままに受け止めればよい。災難に遭えばつらいが、そのつらさと一つになって生き抜く。死が迫ったとき、死と一つになって死ねばよい。苦悩に惑わされないよう生き、死ねばよいというのです

〇長寿の高僧たちが実際に行った「長寿の工夫」
(1)呼 呼吸を整えること
(2)食 食事の節度
(3)心 心の切り替え。感情のコントロール
(4)生 生活を整える。そのために毎日、決まったルーチンをセットして繰り返す
(5)経 お釈迦さまの教えを、声を出して読む

感情的になると、身体はどんどんダメージを受けます。イラつきや怒りの感情が起きると、血圧が上がり、心臓がどくどく早く打ち、身も心もストレスに支配されて疲れ切るだけです
沢庵は物に心を留めないことが肝心と教えました。雨を避けようという心を一切とどめず、さらりと雨と一つになる行動こそ沢庵の早業
紫山老師が101歳まで長寿を保たれたのは、中年ごろから、何事に対しても「思い替え」をするようになったからだと、紫山老師のお弟子さんが言っています。
どんなことにも感謝して合唱しました。たとえば空が曇っていたときだって「いい曇りだな」、雨が降っていても「いいお湿りだな」と即座に思い返しました
仏教における遊戯(ゆげ)とは、何かにとらわれることなく、遊び楽しむ(自由に生きる)ことを言います。遊ぶことも遊び、働くことも遊び、どんなことも遊ぶのです。
このように悟った高僧には、遊びと仕事の区別がありません。そしてこの「遊び」が長寿へ結びついているのです

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より