『いい人ぶらずに生きてみよう』

茶道裏千家・大宗匠、千玄室

自分の弱さに勝つことが大切。ところがそう言うと、自分はそんなに強い人間ではないのです、と反論する方がいます。そんなのは言い訳です。
人間なんて、みんな弱くて、ずるくて、悪いもの。だから少しでも良くなろうと努力をするのじゃないですか。生きるってことは、そういうことです。

なのに、みんな忘れている。己が己が、俺が俺が、私が私が、そんなことばかり考えて、そのくせ、楽なほうへ、楽なほうへ行きたがる。
人の干渉を受けるのが嫌だからとか、面倒な思いをするのは嫌だからと、現実から逃げている。

気力は無いのにプライドだけはあって、そのくせ自分で何かを得るための行動はしない。最悪です。
だけど実のところ、人間というのはもともとそんなものなのです。

社会に適合して上手くやっているように見える人でも、裏を返せばみんな根はぐうたらで、だからこそ自分をコントロールしてなんとかやっていこうと努力している。自分は大丈夫なんて思っていても、ふとしたきっかけで自信を失ったりすると、そういうぐうたらで投げやりな生活に陥る危険を、誰もが持っているのです。ですから、どんな状況になっても、自分は駄目だなんて決めつけてはいけない。

そう思う前に、鏡をみて、身なりをこざっぱりとして、もう一度チャレンジしてみることです。仕事がない、病気で動くのがしんどい、それはたしかに辛いでしょう。だからといって全部を諦めることはない。
死にさえしなければ、少なくとも生きてさえいれば、何かしらのチャレンジはできます。復活のチャンスは、必ずあるのです。

あとは自分自身がやるか、やらないか。最近は聞かなくなってしまいましたが、私たちの時代には、ふんどしを締め直せ!とよく叱咤されたものです。失敗をするのは気持ちがゆるんでいるからだ、気持ちがゆるんでいるのはふんどしがゆるいからだ、という訳です。
無理やりな理屈のようですが、これは私の飛行機乗りの経験からしても、けっこう一理あるなと思うのですよ。

かつてはそうやって活を入れてくれる人がいたものですが、今はほとんどいなくなってしまった。ならば、これからの時代は、自分で自分に活を入れなければならないのでしょう。

アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より