『人生に必要な100の言葉』
精神科医、斎藤茂太
楽しい人生を送るうえで、どうしても欠かせないのが人づき合いです。毎日をイキイキとした表情で動き回っている人は、あなたの周りにもきっと何人かはいるでしょう。そんな人は、決まって人づき合いが軽やかではないでしょうか。ですから、周囲に爽やかな好印象を与えるはずです。
男性なら、気くばりの上手な優しい人柄の持ち主かも。女性なら、いつもにこにこしていて、笑顔の美しい人かも。いづれにしても、どちらも人間的魅力に溢れた人たちです。よく観察してみると、他人に対する気遣い・心遣いが堂に入っているのです。しかも、その振る舞いがっとても自然なのです。
なぜなのでしょうか。男性にしても、女性にしても、「さりげなく相手との距離感を保っている人」、ここに楽しい人づき合いのできるポイントがある。
仕事でも遊びでも、何でもそうですが、べったりとしていないのです。何でも偏りすぎると、故障が出てくるのは人も機械も同様です。そこで私は、この楽しい人づき合いのポイントである「適度な距離感」を、すべての人間関係に当てはまるものと強く実感し、このような言葉をつくったのです。
「つかず・離れず・干渉せず」私の長い人生体験から、自然に紡ぎ出されたこの言葉に、いまでは大いに満足しています。なぜなら、仕事でもプライベートでも、この原則を守っている限り、ほとんど人間関係での躓きがないからです。
私自身の例をひとつだけご紹介しましょう。驚かれるかもしれませんが、わが斎藤家には「憲法第一条」があるのです。それが「つかず・離れず・干渉せず」なのです。この一条だけで、二条以下はありません。ユーモアや洒落を大事にする私ならではの条文だと、少しばかり照れながら、よく他の著書でも紹介するのです。
わが斎藤家は、全部で五世帯が隣り合って、それぞれに暮らしていますので、決してべったりの関係にならないように、このようなルールを設定したというわけです。隣の家族のインターホーンは決してむやみと鳴らしませんし、外出する子どもや孫たちに、行き先や同伴者、会う人などを、絶対に尋ねたりはしません。雨が降っても隣の洗濯物を取り込まない、という徹底ぶりです。
この斎藤家憲法第一条は、現在、全員に支持されて、その効果の恩恵にあずかっています。適度な距離感とは快適な距離感ということです。人づき合いのコツは、誰にでもできる簡単なことです。
アルコール、除菌、マスクの仲間の勉強塾より